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靖国神社神門

写真は靖国神社神門・・・ウィキペディアより




靖国を私たちは、一体どれほど理解しているだろうか。高橋哲哉氏の『靖国問題』(以下本書)は、私たちに靖国が抱えている諸問題を提起してくれる。

(1)靖国が抱える関係性=断層・・・・・戦後責任は未だ未解決だ

「見よ、見よ、わたしの皮膚には鳥肌が立ち始め、わたしの眼からは涙があふれだし、熱い血がこみあげてきて脳天を直撃した。わたしはついに自分が一体誰であるのかを、はっきり知ったのである」
                 (台湾人靖国分祀訴訟原告団  高金素梅『無限的幽谷』〜本書16p)


読者は靖国神社に日本人以外のアジア人も「合祀」されている事実を、ご存じであろうか。
靖国神社には太平洋戦争において、旧日本軍軍人・軍属として動員され戦死した朝鮮・韓国人、台湾人も合祀されている。しかも、遺族の意志とは無関係にだ。

著者は、本書(『靖国問題』)の冒頭、大阪地裁に起こされた「小泉参拝靖国訴訟」=戦死した台湾人(236名)の遺族原告団が、首相と国・靖国神社を相手取って起こした分祀訴訟を取り上げている。
上記にあげた高金素梅氏(註・・・台湾人で歌手・女優を経て立法院議員になった)の文言は、戦前における日本の台湾植民地支配において、同族が弾圧・虐殺(註・・・台湾の独立を訴えた霧社事件)された事実を知った時の衝撃を表現したものである。

しかし、その一方で著者は、訴えられた首相・国・靖国神社の立場に立つ日本人戦死者遺族の主張も併せて紹介している。

「たった一言、靖国を罵倒する言葉を聞くだけで、私自身の身が切り裂かれ、全身の血が逆流して溢れ出し、それが見渡す限り戦士たちの血の海となって広がっていくのが見えるようです」(岩井益子の手記)

著者は、ここに被害者と加害者の立場に立つ相克関係という”断層”を私たちに示してくれる。

_________________________________

(2)靖国神社のもつ性格

著者は靖国神社の性格について、次のように述べていく。

「靖国とは、日本人の生と死(死生観)そのものの、意味を吸収し尽くす機能をもっている」

言い換えるならば、靖国とは「国家神道」の権化と言える。それは日本人をして天皇の家族すなわち「赤子」であることを意味させる。
戦死することによって、天皇の「赤子」(日本人)は神すなわち「御霊」(みたま)に昇華する、という教えに他ならない。
ようするに、死することによって、天皇(天子)に帰依=殉教できる、と言うまさに宗教観念=国家主義神道の真髄がここにあると言えよう。

それでは、日本人に叩き込まれた「皇民化教育」=天皇への殉教者意識とは何か。著者はそれについて次のように述べる。

「大日本帝国が、天皇の神社=靖国を特権化し、その祭祀によって軍人・軍属の戦死者を『御霊』として、顕彰し続けてきたのは、それによって遺族の不満をなだめ、その不満の矛先が決して国家へと向かうことのないようにすると同時に、何よりも軍人・軍属の戦死者に最高の栄誉を付与することによって、『君国の為に死すること』を願って彼らに続く兵士たちを調達することにあった」

読者は「靖国」が侵略戦争に要する鉄砲玉(兵士)を再生産するための、宗教的拠り所に過ぎないことが、これで分かったと思う。

(3)分祀訴訟について
著者はこのあと、分祀訴訟について言及している。

「旧植民地出身者からの合祀取り下げ要求を拒否する理由として、『靖国派』の人々は、靖国神社こそ日本人の戦死者追悼の中心施設だと言う。しかし追悼とは何か。それは文字通り、死者の死を、後から『追』って『悼』むことに他ならない」

ところが、司法判断のことごとくが、分祀の要求を却下してきた。
靖国神社が遺族の分祀要求の意思を尊重せず、合祀に固執することは許されないのではないか。それは、まさに「天皇のために死する」ことを旧植民地出身遺族に認めさせることになる。
過去、日本が旧植民地に対しておこなった圧政と戦争への強制動員と戦死。遺族は日本政府によって殺された思っている。
それゆえ、遺族の分祀願いを門前払いにすることは、過去行なった植民地支配を正当化することではないか。

(3)政府は国立追悼施設の建設に踏み切るべきだ
著者は靖国神社に代わって戦死者を追悼する施設として「国立追悼施設」の設置を提言している。
「『国立追悼施設』があらたなる戦死者の受け皿にならない必要条件とは何か。
それは、この施設における追悼が決して、顕彰とならず国家がその追悼を新たな戦争につなげていく回路が完全に断たれていることである。
言い換えるならば、国家が不戦の誓いを現実化して、戦争に備える軍事力を完全に廃棄することである。また、過去の戦争についての国家責任をきちんと果たすことが必要である」

(4)おわりに
以上簡単に「靖国神社」の持つ性格と合祀の矛盾点と被害者・加害者との断層関係。さらに、旧植民地出身遺族から要求されている分祀の必要性と靖国神社に代わる国立追悼施設の建設提案などをみてきた。

日本国民に求められていることは一体何か。
一口で言うならば、いまだに、日本がおこなった戦争責任と戦後責任が一切解決されていないことだ。従軍看護婦問題。朝鮮女子勤労挺身隊。軍の命令による沖縄集団自決問題。中国大陸で日本軍がおこなった南京事件・関東軍731部隊による人体実験などなど。







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